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メンデスとアルマゲスト

昔に書き途中だった擬人化小説の、メンデスとアルマゲストの初接触。
メンデスはプライド高いツンデレなうさぎ、アルマゲストは仔犬幼女。
・・・っていう妄想による捏造。


 本部にて定期メンテナンスを終えて、メンデスは人通りの多いフロアを早足で歩いていた。
 メンテナンスをした後は、身体の調子は良いが、頭が痛くなる。
 頭痛の原因は不明で、担当者も頭を抱えるばかり。そんな原因不明という不安の気持ちもあってか、メンデスはこの頭痛の時には酷く機嫌が悪かった。
 フロアを行き来する者たちは、そんなメンデスの機嫌が悪い事を知ってか知らずか、道を譲るように慌てて距離を置く。
 メンデスは怯えた様相の者たちなど特に気にもせず進んでいたが、ふと背後に微かに悪寒にも似た奇妙な気配を感じて足を止めた。
 振り返って見た先には何も無く…と思ったが、視線を下げると、気配の主がいた。
 小さく幼い、白いワンピースを着た少女が、じっと様子を伺うように上目遣いに見詰めている。黒い玉のようなものを大事そうに両腕で抱えていた。
「・・・・・」
 メンデスは短く息を吐くと、再び早足で歩き始めた。
 いくら苛立っているとはいえ、子供に奇妙な気配を感じるなんて、どうかしている。
 しかし、何を考えているのか、その少女は早足で歩く後ろを、必死で追いかけて来る。
 メンデスは、付いて来る少女を横目で一瞥して、歩く速度を上げた。
「わぅ…」
 小さな呻き声。
 嫌な予感がして、振り返ると、白い少女は床に顔を付けて転んでいた。コロコロと黒い玉が持ち主の手を離れ床を転がる。
 白い少女は、のたのたとした鈍い動作で起き上がり黒い玉を拾うと、またこちらを見上げてきた。何か言いたげな顔をしている。
 廊下を歩く者たちも、その様子に何事かとざわめき始めた。
 メンデスはこめかみを押さえて溜め息をすると、身を屈めて白い少女に顔を近づけた。
「お前、何のつもりだ」
「アルマ」
「名前など訊いてない」
「わぅ…」
 白い少女はしゅんとして、黒い玉に顔を伏せる。
 何を考えているのか、さっぱり解らない。
「何故、私に付いて来るんだ」
「アルマは、メンデスと同じだよ」
 こちらから訊いてやれば、目を輝かせて訳の解らない事を言い出す。
 名前を知っていた事には少々驚いたが、本部でワンモアを知らない者はいないのだから、当然といえば当然だった。
 しかし、こんな幼い子供まで知っているとは。
「私と同じでたまるか。親はどうした」
「知らない」
「家に帰れ」
「お家、ここだよ」
 白い子供は、黒い玉を自慢するように近づける。
「・・・・・」
 返答に困り、メンデスは目を逸らした。
 心無しか頭痛が酷くなったように感じて、メンデスは顔をしかめた。
 警備員でも呼んで引き取らせようと思った時、ふわりと温かい風が吹いた。
 はっとして周りを見回すと、人通りの絶えないフロアであるはずなのに、自分と白い少女以外、誰ひとり居なくなっていた。
 のしかかるような空気の重さを感じて、メンデスは目を細めた。
 神経を研ぎ澄まし、周囲を電波探知してみる。
 異次元だろうか。視界に入る分だけの空間だけが切り取られたようだった。視界に入らない先は何も無い空間でしかない。
「何の真似だ」
 白い少女に問いかけてみる。
 異次元へと隔離された原因は、どう考えてもこの子供以外には考えられなかった。
「エクスシアがアルマを探しにきたの。でもアルマは、まだメンデスと一緒がいい」
「エクスシアだと?」
 聞いたことのある名前に、メンデスは記憶を探った。
 エクスシアとは、ワンモアに仕えるエクストラのひとり。つい最近知った名前だった。
 天使の光輪を頭上に携え純白の翼を生やした筋肉隆々の大男で、寡黙なために何を考えているのか解らない奴だと聞いたことがある。
 まだ、エクスシアのワンモアについての情報は何も無いが…。
「お前、ワンモアか」
「うん。メンデスと同じ」
 無邪気な笑顔浮かべながら、白い少女は答えた。
「そうか」
 メンデスは静かに頷いた。
 こんな子供が、か。
 まだ公にされていない理由は、まだ幼い子供だからだろうか。
「あと、数年くらい」
「何だ?」
「メンデスが戦えるの」
「・・・知っている」
 メンデスはふふっと笑った。
 自分の寿命が短いことくらい、知っていた。
 戦闘に出撃する度に更に寿命を短くしている事も、他を圧倒する異常なまでの戦闘力の代償だった。
「でもね、アルマがメンデスの代わりになるから、大丈夫だよ」
 万遍の笑みを浮かべて、白い子供が言った。
「アルマは、完成品だから」
 無垢に放つ言葉に、メンデスはびくりと身を震わせた。
 いつか、そうなるであろうことは知っていた。けれど自分には、まだやるべきことがある。
 メンデスは目を閉じて、小さく溜め息をする。
「ふん。笑わせるな」
 目を見開いて、装甲の翼を勢いよく広げる。その衝撃で、視界内の世界に亀裂が生じた。
「お前のような仔犬に、私の代わりは勤まらない」
「!」
 白い少女は目を大きくして、立ち尽した。
 ガラスのように砕け散った世界は元の空間に戻り、辺りは人通りと騒がしさで満ちる。
「アルマ様」
 大きな白い翼を生やした大男が、白い少女の後ろに立っていた。
「エクスシア…」
 白い少女は振り返り大男を見上げると、ばつが悪そうな声を出す。そんな少女を、大男は優しく片腕で抱きかかえた。
「手前はエクスシアと申します。メンデス様、ご迷惑をおかけしました。どうかご無礼をお許しください」
 大男が身体に似合わず深々と頭を下げると、白い少女は大男とメンデスを交互に見て、同じように頭を下げた。
「構わん」
 メンデスは意に介さず、大男と白い少女に背を向けて歩き始めた。
 頭痛が少し治まったが、気持ちは晴れなかった。
 誰にも言われたくなかったこと。それを面と向かって、しかも自分の上位互換であろう存在に。
 自分はあとどれくらい戦えるのか、あとどれくらいこの力を使えるのか。
「ふん…」
 余計な事を考えるのはやめようと、メンデスは軽く頭を振って足を速めた。
 
 
 
 
 
終わる

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