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TOOL 18

 何で、どうして。
 事態に混乱して、逃げるように自分の部屋に帰った。
 あれから、ギガデリックはジェノサイドの部屋に行かなかった。正確には、行けかなかった。
 ベッドの上にうつ伏せになって、枕に顔を埋める。
 ジェノサイドが実験体だった。
 醜いバケモノが存在していた。
 そのバケモノをあっと言う間に消したジェノサイド。
 血と残骸。
「オレは…」
 番号で呼ばれた自分は、実験体なんだろうか。
 ベッドの傍らに浮いている目玉型メカが、心配そうにころりと傾く。
「ジェノ兄は…。ジェノ兄は、オレのコト、デリックって呼んだ…」
 本名だった。
 この施設に来る前まで、呼ばれていた名前。
 しかし、その名で呼ばれるのは、いつも決まって咎められる時だった。
 自分の能力を、誰も認めてはくれなかった。
 いつだったか幼い頃、この能力を信じてもらえなくて近所の子と大喧嘩になり、思わず言ってしまった。「お前なんか、車にひかれちまえ!」と。
 ちょうど近くを通っていた車を、怒り任せに操って、その子を引かせてしまった。幸い、かすり傷だけですんだ。運転手は車が勝手に動いたと言い張っていたが、当然そんな事は信じてもらえず、警察は運転手の不注意という事にした。
 …誰も、この能力を認めてはくれなかった。
 居心地の悪い、世界だった。
 昔読んだ小説や漫画の、魔法だとか超能力だとか、そんな不思議な力が使える主人公を、みんな憧れていた。ごっこ遊びだってやっていた。大人だって、その話を夢中で読んでいた。
 それなのに、現実では、その能力は認めてもらえない。
 矛盾した世の中だなと、幼心に思った。
 いっその事、この漫画の世界に入れれば、主人公みたく世界を救う冒険に…なんて、そんな馬鹿げた事も考えた。
 現実と空想の世界の間で、どっち着かずな自分の存在を、どこか諦めて冷めたように思えてきた時、この施設に呼ばれた。
 誰も咎めなかったし、咎める名前を呼ぶ人もいない、そんな世界。
 本気で嬉しかった。どんなに喜んだ事か。
 けれど、あの時、ジェノサイドに本名を呼ばれて、気付かないようにしていた想いに、無理矢理気付かされた。
 何となくでしかないけど、これが真実なんじゃないかと思う。
 どうして両親が、この能力を認めてくれなかったのか。
 それはきっと、普通の人間でいて欲しい、と、そんな最後の願いだったんじゃないかと。
 能力を使わなくても、人間は生きていけるんだから、と、それを解って欲しくて、両親は泣きながら怒っていたのかもしれない。
「オレ、気付くの遅過ぎだっつーの…」
 ギガデリックは、寄り添っている目玉型メカを抱き寄せて、また溜め息をつく。
「でも、今更、戻れねーよな…」
 この施設では、普通じゃない事が、普通だから。
 もう、この世界でしか生きられないような気がする。ここはあまりにも居心地が良過ぎた。
 それに、もう、どんな顔をして両親に会えば良いのか解らない。
 両親への殺意は、完全に消えたと言うのに…。
「どーすればいーのか、解んね…」
 主人の気落ちが心配なのか、目玉メカは、大きな目を細めた。
 再び溜め息をしようと息を吸い込んだその時、ジェノサイドが部屋に入って来て、ギガデリックは弾かれたように飛び起きた。
 あの時に見た、実験の記憶が鮮明に蘇る。
 数秒の沈黙が流れて、ジェノサイドは口を開いた。
「ごめんね…」
 ただ一言、小さくそう言った。
「何で…ジェノ兄が…謝の?」
「あのね、ギガ君…」
 恐く無いと言えば、答えは嘘だ。
 だから、本能的にだったのかもしれない。
 1歩近寄ったジェノサイドに、ギガデリックは身を引いてしまった。
 その様子を敏感に悟ったのかもしれないジェノサイドは、身体を縮こませて背中を向けた。
「ごめん…。もう…、会わない方がいいよね。謝りに来ただけだから、もう二度と…」
「待てよ!」
 部屋から出ようとするジェノサイドを呼び止めたが、止まろうとしないジェノサイドに、ギガデリックは駆け寄ってコートの裾を引っ張った。
「まだ帰るな! 言いてーコトと、聞きてーコトがあんだよ!」
 部屋のドアに念じてドアを閉めさせると、ロックも掛け、そのパスワードも変更させた。その一瞬の素早い対応に、ジェノサイドは少し驚いて、こちらに振り向いた。
「ごめんね、ごめんね…」
 ただただ、震えを帯びた声色で謝罪を繰り返す。
 違う。聞きたいのは、謝罪の言葉なんかじゃない。
 本当なら、謝るのは自分の方。来るなと言われたのに、行ってしまった自分。
「ごめんね、恐かったでしょ…。僕は、バケモ…」
「黙れ」
 低い声で、その先の言葉を止めさせた。
「僕が実験体を処分する所、見たでしょ? 僕も、人間じゃな…」
「うっせぇ! オレが聞きてーのはそれじゃねーっつの!!」
 力任せに怒鳴ると、ジェノサイドは、はっとして身体を固まらせた。
「オレだって、普通と違うっつの! 機械操れるし! まだ誰にも言ってねーけど、少しくらいなら、動物だって操れんだよ!! だけどな! 誰が何つっても、オレは人間だ!!」
「ギガ君…」
「ジェノ兄は、オレの力と違うけど、きっとオレと同じなんだよ! だから人間! それともテメェ、オレが人間だっての否定すんのかよッ!?」
「ち…違うよ、そんな事…」
「じゃあ、ジェノ兄も人間。分かったか!? 分かったよなッ!!」
「ギガ君は、僕の事、人間だと思ってくれているんだね…」
 ジェノサイドは、ゆっくりと息を吐く。
「当りめーだっつの!」
「ありがと…。それだけで、僕、人間でいられる気がする…」
「バカなコト言ってんじゃねーよ。人間だろーが」
「うん…」
 ジェノサイドが落ち着いたのを確認すると。ギガデリックは、部屋の端からパイプ椅子を引っ張り出してジェノサイドを座らせすと、自分は、ベッドの端に座って向き合った。
 何を言えばいいか…。少し迷っていると、自分の口は、言葉よりも、質問の方が素直に出てくれた。
 ゆっくりとした口調で訊いてみる。
「ジェノ兄はさ、何で、この施設に来たの?」
 そうだ。この質問。何度も会ってるのに、一度も始まりの事を訊いた事がなかった。
「僕ね、記憶が無いんだ。この施設に来る前の、記憶が。気がついたら、ここに居たんだよ」
「え? でもジェノ兄、大学の教授やってたって言ってたじゃんか」
「それは…教えてもらった記憶なんだよ。…本当は、そんな過去だったなんてウソだって…知ってる。だけど、ここに来る前の事。何も覚えてないなんて寂しいから…ウソの記憶でも欲しかったんだ」
「……」
「唯一ね、覚えてる事があるんだ」
「何?」
「ある人がいて、僕はその人の為に生まれて…今でも、その人の為に生きてるって事」
「ソイツだれ? ドコにいんの?」
「第1地区で眠ってるよ。もう…ずっと…」
「分かってんなら行けばいーじゃん! ソイツに会えば、ジェノ兄の記憶戻るかもしれねーし!」
「無理だよ。管理者君の奥の部屋だから」
「管理者が何だっつーの! オレがぶん殴ってでも会わせてやるよ!」
 声を荒げて言うと、ジェノサイドは、はっとして大きく息を吐いた。
「・・・あはっ、やーだ、恥ずかし。僕ったら、泣いちゃったじゃない。今のナシね」
 いつものヘラヘラした態度に必死に戻そうとしているのが解った。
 ゴーグルで見えない先の目が泣いてた事くらい、もう知っていた。
 そして、最後にジェノサイドは言った。
 また実験だから…と、部屋を出て行く寸前に。
「ギガ君…、僕の事…嫌いにならないでいてくれるんだね…」
「嫌いになる理由なんか、ねーよ」
 ジェノサイドの実験を止められるだけの権利は無いし、着いて行ってジェノサイドの実験を見たら、今度こそ、自制が効かずに研究員を殺してしまうかもしれなかった。
 ギガデリックは部屋のドアを開けて、ジェノサイドの背中が見えなくなるまで見送った。聞きたい事は、もっとあったのに、何から訊けばいいのか分かんなくて。
 でも、言いたい事は言えた。
人間だ、と。
 ジェノサイドを見送った後、ギガデリックはベッドの端に座って、目を閉じた。
 本当は、気付いていた事だった。
 確かではないが、自分には相手が何であるかを本能的に見極める能力もある。でも、この能力は100%のものではなかったから、自分でも信じていなかった。
 ジェノサイドからは、人間の気配が殆どしない。
 だから、初めて会った時に機械なのかと思って、思いっきり脛を抓った。それを痛がっていたから、やっぱり人間なんだろうと思っていた。
 ほんの少しだけは、人間の気配がするから、きっと、…いや、絶対に人間なのだろう。
 それだけで十分だと思う。
 あんなに酷い実験をする研究員の方が、人間だとは思えない。
 また実験だからと、出て行ったジェノサイドの事を考えると、いてもたってもいられなかった。
「どうすればいーんだか…」
 溜め息混じりに、言葉を吐く。天井近くで、目玉型メカたちが、太陽系を真似して円を画いて公転している。その内の、太陽役をしていた赤い目玉型メカが、すとんとギガデリックの膝の上に下りて来た。
「そっか…」
 その様子を見て、閃いた。
 簡単に考えれば、ジェノサイドが実験されなければいいワケだ。ここの連中は、ジェノサイドが人間だと思って無いから、あんな酷い実験をする。要はジェノサイドが異質である事を知らない人たちの所へ行けばいい。
 この施設から、抜け出せばいい。その1区にいるという、大事な人も一緒に。
 閃きにも似た考えだった。
 でも。
「あれ…?」
 ギガデリックは、この施設の出口を思い出そうとしてみたが、思い出せなかった。
 自分は、どこから、この施設に入ったのだろう。
 この施設に初めて来た時の事だけが、ぽっかりと記憶から抜けていた。
 そこから辿ってみると、抜け落ちた記憶は、それだけでは無かった。
 この施設に来る前、自分はどうやってここの研究員と知り合ったのか、どうやって家から出たのか、その時の両親はどういう様子だったのか。
 無に塗りつぶされたような、空白の時間。
 不安が、じわじわと襲ってきた。
 僕ね、記憶が無いんだ。…と、ジェノサイドの言葉を思い出す。
 ギガデリックは、頭を抱えた。
 記憶を消されたんだと、確信した。
「オレの記憶を消さなきゃならねーコト、したってコトだよな」
 生まれた不安は、すぐに危険信号へと変わった。
 ここに居てはいけない。
 そうだ、ジェノサイドを連れて、ここから出よう。
 それしかない。
 冷静さに欠いた頭で、ギガデリックは必死に考えた。
 出口を探さなければ。
 研究員に吐かせるか。
 自分で探すか。
 研究員に吐かせた方が早い。
 施設側は、11地区のチーフであるジェノサイドの記憶も奪った。
 研究員が出口を知ってる保証は無い。
 自分で探す。
 この施設の事を知らない。
 知ってるのは管理者。
 殴ってでも出口を吐かせる。
 管理者を探す。
 管理者は2区にいる。
 管理者に会って、1区で眠っているジェノサイドの大事な人を連れ出して…。
 でも、ずっと前から興味半分で管理者のいる2区を探しているのに見つからない。
 ふと、ジェノサイドがホリックに2区へ行くように言っていたのを思い出した。
 けれど、あのホリックというヤツは気に話しかけるのは喰わないし、いつもどこにいるのか知らなかった。
 どうすれば…。
 深くは考えられない焦った思考でいっぱいになっていたその時、突然、部屋のドアが開いて、誰かが入って来た。
「・・・あ…」
 お互いに目が合って、間抜けなくらい目も口も大きく開けていた。
 ドアはロックされていた。
 それなのに、いとも簡単に入って来た。
 もしかしたら、自分と同じに機械を操れるヤツなのだろうか。
 ギガデリックは目玉メカたちにいつでも戦闘態勢に入れるように待機させ、様子を伺う事にした。
 ゆっくりとベッドの端から立ち上がる。
 すると、相手は恐る恐る手を挙げた。
「よ、よぅ…」
 挨拶のつもりだろうか。引き攣った笑顔を作る。その口の端に大きな牙が見えた。
「よう」
 挨拶をしてきたのだから、とりあえず、こちらも軽く挨拶を返してみる。
 入って来たヤツは、黄色っぽい肌をした、赤茶色の髪。年齢は、自分と同じくらいに見えた。
 よく見れば、人間の目をしていなかった。暗闇に浮かぶような、血の色の目。
 ギガデリックは、自分が能力を使っている時に、瞳の色が深紅色に変わる事をふと思い出した。
 目を細く凝らし、探ってみると、ジェノサイドとは全く違うが、人間の感じはあまりしないという共通点があった。
 こいつも実験体だと、確信した。
 侵入者は、くるりとドアの方に向く。
「おい、エレクトロ。中に人いるじゃねぇか! ・・・いや、研究員は居ないって言ったけどよぅ…」
 何やら、独り言を始める様子に、ギガデリックは顔をしかめた。
 いわゆる、危ない人ではないだろうか。
「…そんな事言われてもよぅ…」
 やや泣き言のような弱い声を出して、侵入者がこちらに向き直った。
「あの、えっと…。迷子…ってやつだ」
「あ?」
 何を言ったのか、一瞬理解できずに、ギガデリックは首を傾げた。
 すると侵入者は大慌てで、再びドアの方を向く。
「疑われてんぞ! …だって、そんな事…。…うぅー」
 最後には犬のうめきに似た声を出す。
 どうやら、姿の見えない誰かと話をしているようだった。
 もしかしたら、本当に自分と同じに機械と対話して操れるヤツなのではないだろうか。
 同じ者との出会いによる、孤独からの解放の歓喜。
 特別なのは自分だけではなかったという、優越感の崩壊。
 そんな思いが頭をぐるぐると回っていると、侵入者は、またこちらを向いてきた。
「オレは、7区に帰りたいんだけど、研究員に見つかるわけにはいかねぇんだ。ちょっとでいいから、ここにいさせてくれ」
「ああ、いいぜ」
 ギガデリックは、あっさりと願いを聞き入れた。
 どんなヤツなのか解らないが、興味が湧いたからだった。
 7区に帰りたいという事は、コイツは7区の実験体の可能性が高い。
 研究員に見つかりたく無いという事は、研究員に対して悪い事をしている証拠。
 外地区への許可証も持っていないのに、自分の地区から出るという事は、よほどの何かをしているのではないだろうか。
 その内容も気になった。
「本当か」
 許可を出すと、侵入者はぱっと顔を明るくした。
「ありがとな」
 無邪気に笑顔を見せて、侵入者は安心したらしく、軽く伸びをする。
 相手に警戒が無いと知ると、ギガデリックは問い質す事にした。
「なぁ、どうして迷子になったんだ?」
「え、ああ…。どうしても会いたいやつがいて、そいつに会った帰りだったんだ」
「実験体は普通、地区から出るのは禁止だろ」
 と、言った後に、ギガデリックは、マズい事を言ったと思った。
 侵入者が実験体である事は、まず間違いないだろうが、今の発言ではこちらに警戒させるようなものだった。
「そうなんだけどよ。何か、心配だったんだよ…」
 しかし、相手は特に気にしなかったようで、普通に返事をしてきた。
「ふーん」
 ギガデリックは軽く頷く。
 実験体に心配されるようなヤツなんて、この施設にいるのか。
「許可証無しで別の地区に行くのが、下手すりゃ処罰される事だって知ってんだろ? 何で、そこまで…」
「友達だからな」
 少し照れくさそうな笑顔で答えてきた言葉に、ギガデリックは微かに羨望のような感情が湧いた。
「…ん。ああ、そうかよ。…もう大丈夫みたいだ。匿ってくれて、ありがとな」
 また姿の見えない相手と会話をしたらしい。侵入者は部屋から出て行こうとした。
「お、おい。お前、さっきから誰と話てんだ? 機械…か?」
 ギガデリックは慌てて、一番知りたかった事を訊いた。
「機械みたいだけど、機械じゃねぇな…。ここの管理者なんだとよ」
「な…」
 信じられない言葉に、ギガデリックは目を見開いた。
 ずっと興味を持って探してたヤツの知り合いを見つけた。この機会は絶対に逃したらだめだ。
 部屋を出た侵入者に駆け寄り、手を掴んで、部屋に引き戻した。
「おい、待て! 管理者って…!!」
「ん?」
 部屋に戻されて、驚いた顔の侵入者が振り返る。
「ドコにいんだよ、そいつ!」
「えーっと…。右行って左行って左行って……あれ? 右か? うー、覚えてねェや…」
 侵入者は、心底困った表情で頭を掻く。
「オマエ、エレクトロに何かあるのか?」
「2区に行って…、大事な話があんだよ」
「そうか。良くわからねェけど、会いたいのか。・・・どうするエレクトロ? オマエに会いに行きてェんだとよ」
 侵入者は、管理者と話を始めた。
「許可が必要だって言っても…。…でもよ、オマエに用があるって、言ってるんだぞ。オレだって、オマエに会いに行ってるじゃねぇか」
 その様子を、ギガデリックは、複雑な思いで眺めていた。
 そうか、管理者の手伝いがあったから、パスワードでロックの掛かっていたドアを開けられたのだろう。
 特別とも思えない実験体が、管理者と同等に話している。
 この狂気に満ちた施設の全てを知り、厳重に管理している者が、一体何故…。
 もしや、この侵入者は、実はとても偉いヤツなんだろうか。ジェノサイドみたいに実験体でありながらチーフか、それ以上の。
 いや、そうだとしたら、地区移動の許可証を持っているはずだ。
 話が終わったらしく、侵入者は、こちらを向く。
「オマエ、機械持ってるのか?」
「あ? 目玉のコトか?」
「エレクトロが、2区までの順路データを作るって、言ってるぞ」
 ギガデリックは、目玉型メカを呼ぶと、侵入者の前で滞空させる。
「あ…。オマエも、オレと同じに重力が操れるのかよ!?」
 侵入者は、空間に浮かぶ目玉型メカとこちらを交互に見て、感激したように顔を輝かせる。
「重力じゃねーよ。オレは、どんな機械でも操れんだぜ」
「へぇ、エレクトロみてぇだな。オレと同じなのかと思った」
 侵入者の苦笑いに、ギガデリックは自分が思った、同じ者との出会いによる、孤独からの解放の歓喜と、特別なのは自分だけではなかったという、優越感の崩壊を思い出す。
 きっと、同じ思いなのかもしれない。
 孤独と優越感を抱いて生きているという所は、仲間なのかもしれない。
 そう考えが辿り着くと、ほんの少し仲間意識が現れた。
 仲間だとしたら、一緒にこの施設から出るべきだろうか。
 いや、管理者の友達なのだから、この施設から出るなんて、考えもしない事だろう。
 侵入者は、耳の穴から、小さな部品のようなものを出し、目玉型メカの上に置いた。
 目玉型メカは、ギガデリックを不安げに見詰めていたが、やがて目を大きく見開いた後、ゆっくりとまばたきをする。2区への順路データを取得したと、伝えてきた。
「これで、いいか?」
 侵入者は小さな部品を耳の穴に戻すと、ギガデリックを見る。
「ああ、確かにデータもらったぜ」
 そう答えると、侵入者は最後に軽く挨拶をして、部屋を出て行った。
 目玉型メカを抱き寄せると、ギガデリックは、笑った。
 管理者に会える。
 出口を教えてもらい、ジェノサイドと、ジェノサイドの大事な人を連れて、逃げればいい。
 もし、管理者が拒否したら…。
 ・・・侵入者には悪いが、力づくで管理者を…。
 
 
 
 
 
つづく

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