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  • 日常のこととか、創作や二次創作の絵や妄想を好き勝手に綴っていく日記。
    ゲームや嗜好品の感想も。

  • 妄想の世界は狭いくせに無限

    ★小説ひとつアップしたのだぜ。
    仕事中に、小説ネタが3つ思いついてしまって、仕事どころじゃなかった(オイ)
    いや、でも、仕事してたよ。うん。メモ紙にネーム書きながら。
    帰宅して文章打ち込み。書き終わっても何度も読み返して、修正手直し繰り返し。
    ひとつは展示物に出せるくらいには仕上がったけど、残り2つはダメだった。
    ・・・なので、ダメだったお話は日記で消化。
    妄想全開なお話でござる。
    展示物にある「籠ノ鴉」小説の後の出来事なので、読んでないと意味不明な内容です。早い話が、我が家のⅨ籠は多重人格です。


    もう我慢の限界だった。
    あんな所に永い間閉じ込めておいて見て見ぬ振りして、存在してなかったことにしていたくせに。都合よく命令してきやがって。その命令を拒否したら、今度はこれだ。
    「Ⅸ籠、落ち着け」
    煩いくらい視界にたくさん映る白衣の研究員の中のひとりが、平静さを装って言った。
    「うるせぇッ!!」
    噛み付くような勢いで声を張り上げると、ジャラと手足の両手両足の枷が音を立てた。
    研究員たちは一斉に半歩引いて、恐怖の混じった困惑の表情を濃くする。
    「ふざけんじゃねぇ! 今更“俺たち”のこと、コキ使おうだなんて、ムシが良すぎんだよ!」
    -腹が立つ。 もうどうでもいい。 死ね。 そうだ、全て殺せ。 やめようよ。-
    複数の思考が絡む。この身体の主導権はひとりだけ。複数の思考があれど、行動の決定も得る記憶もひとりだけのもの。
    許さない、みんなぶっ壊れろ。
    「俺に従え…!」
    念を込めて意識を集中させる。
    ざわり、と場の空気が変り、研究員たちの足元の影がざわめく。
    研究員たちはびくりと身体を揺らして虚ろな目つきになる。次々と歩み寄ってきて、壁に繋がっている枷を引っ張り始めた。
    一般人の力で楔を引き抜けるものではないが、影の力で支配された研究員たちは自己抑制を完全に失っている。たいした筋肉の付いていない腕の筋繊維をぶちぶちと切らしながら引っ張っていた。
    そんな研究員たちを、脆弱な奴らだなと心の中で舌打ちした。
    ようやく左腕の楔が壁から抜ける頃には、研究員たちの腕は白衣の上からでも分かるほど腫れ上がって血が滲んでいた。
    ひとつ抜ければ十分だ。薬で弱ってなけりゃ、わざわざこいつらにやらせる必要も無かった。
    「…死ね」
    再び研究員たちに言い放つ。
    研究員たちは無表情のままそれぞれに動き始める。己の首を絞める者、壁に勢いよく頭を打ち付けて頭を潰す者、所持していた薬品を飲み痙攣をする者。ひとり、またひとりと倒れていった。
    「ふん」
    静かになった部屋で、右腕と両足の枷を引き抜く。乾いた音を立てて、壁の一部が砕けた。
    手足に枷が付いたままだが、自由になれた身に満足する。
    しかし気が晴れるわけではない。薬のせいで痺れが残っている身体で、すぐ近くに倒れていた研究員の頭を踏み潰した。薄皮の下の殻があっさりと割れて、中身が出た。
    壁越しでも、部屋の外に人の気配を感知する。まだいっぱいいる。
    -ぜんぶ壊していいよ。 勝手にしろ。 兄さんはいる? みんな殺せ。 もうやめて。-
    「クロウ!」
    声がして、赤い髪を逆立てた男が部屋に飛び込んできた。自害した研究員たちを見回して、目を丸める。
    -知ってる。 知らない。 殺せばいい。 あの人は殺してくれる人。 …鎖?-
    「てめぇ、また暴れやがったのか!?」
    「鎖さん、まって」
    赤髪が歪んだ表情を浮かべたとき、草色のニット帽を被った男が現れた。
    「…ボス、迎えに上がりました。一緒に戻りましょう」
    「誰だ」
    問えば、2人の男は目を大きくして、互いに横目で目を合わせた。
    「俺は刺斬です」
    ニット帽の男が名乗る。
    -知らない。 殺せ。 声を聞いたことがある。 どうでもいい。 刺斬だ。-
    「怖い思いをしましたね。もう大丈夫です」
    -大人は嘘つき。 もう閉じ込められるのは嫌だ。 兄さん以外は信じない。 騙そうとしてる。 早く殺せ。 本当に?-
    腹が立つ。騙されるもんか。そういうやり口なのは知ってるんだ。みんな殺してやる。
    気に踏み込んで、間合いを詰める。ニット帽の男の首に手を伸ばした。
    「チッ…」
    赤髪の男が舌打ちをする。ニット帽の男に手が届く前に腕を掴まれて、床に押え付けられた。
    「殺してやるッ!」
    「すんません、ボス…」
    手に持っているのが注射器だと気付いても、どうすることもできなかった。
    -次に目が醒めたらあの狭い所なの? 死ね、殺してやる。 眠っていい? 兄さんに会いたかった…。 もう疲れた。 …ありがと。-
    「嘘つき…」
    消える意識の中で、せいいっぱいの悪態を付いた。


    借りてきた猫のようだった。
    ボスと呼んでも、Ⅸ籠と呼んでも反応しない。まるで何も聞こえていないかのように、余所余所しい態度をしている。
    「どう思います?」
    刺斬は、Ⅸ籠の顔を覗き込む鎖に声をかける。
    「どうって言われてもよ。いつものⅨ籠の人格じゃねえってくらいしか…」
    鎖はソファーに座って縮こまっているⅨ籠に視線を向けたまま立ち上がった。Ⅸ籠はそれを目で追うものの、何の表情も見せなかった。
    「ボス、聞こえます? 返事してください?」
    刺斬はⅨ籠に顔を近づけて、少し大きい声をだす。目と目が合うが、きょとんとした表情だった。
    「耳に何か詰まってんじゃねえか? おい、耳貸しな」
    鎖は言いながら、Ⅸ籠のヘルメットを取ると白銀の髪を掻き上げて耳の穴に指を突っ込む。Ⅸ籠は肩を窄めて目に薄っすらと涙を浮かべて震えていた。
    「まって、まって鎖さん。ボスの様子がよろしくないっス」
    「クロウは、耳が弱いのか」
    「そういうの、やめましょう」
    刺斬がジト目で鎖を見る。鎖はニヤニヤ悪戯な笑顔を浮かべながら、やや乱雑にⅨ籠の頭にヘルメットを被せた。
    「どーしたもんかな」
    鎖は息を吐きながら後ろ頭を掻いた。
    「暴れるような危険性は無さそうですし、自然に戻るのを待ったほうがいいっスかね」
    「催眠術だっけか? 術師が手叩くと、催眠術が解けるみてえに、元の人格に戻らねえかな」
    「そんな都合よくならないスよ」
    「こうやって、3! 2! 1!」
    パン!
    「鎖、うるさい」
    「えっ?」
    「…戻った…?」

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